WCAGの適合要件を理解してみる
筆者のWCAG (Web Content Accessibility Guidelines)に対する理解を深めることを目的に、達成基準についてまとめてみる。 何をもって達成したと見なすことができるかを理解し、実際にアクセシビリティ対応した技術を利用できるようになることが目的。
何を満たしたら適合したといえるのか
https://www.w3.org/WAI/WCAG22/Understanding/conformance を見る。以下の文章は筆者の現状の理解を書き下したものにすぎないので、原文を必ず確認してほしい。
(要件1) 適合レベルを満たしていること
達成基準にはA(最低限の達成レベル), AA, AAAの3つのレベルに分かれている。 達成基準は How to Meet WCAG 2.2 で一覧できる。項目に対応した、達成するための技術的な解説や、反例もここで確認できる。
- Level Aの達成基準を満たすとそのコンテンツはLevel Aに適合している
- Level A, AAの達 成基準をすべて満たすとそのコンテンツはLevel AAに適合している
- Level A, AA, AAAの達成基準をすべて満たすとそのコンテンツはLevel AAAに適合している
上位のレベルを満たすには下位のレベルを満たす必要があるので、まずはLevel Aから見ていくとよさそう。
いずれも、Levelに対応したそのコンテンツの代替バージョンが存在すれば、適合していないコンテンツがあっても、代替バージョンの提供をもって適合したと見なしてよい。
この代替バージョンは、以下のようになっていなければならない。
- 適合するレベルと同等の達成基準を満たす
- 元になるコンテンツと同等の機能や情報を提供する
- 元になるコンテンツと同等に最新である
- 以下のいずれかの条件を満たす
- 非適合ページから適合バージョンにアクセシビリティ対応の手法で到達できる
- 非適合ページに「アクセシビリティ対応はこちら」のようなリンクを設置する、など
- https://www.w3.org/WAI/WCAG22/Techniques/general/G136 のような対応をする
- 非適合バージョンには適合バージョンからしか到達できない
- たとえばランディングページが非適合ページであってはならない。非適合ページに直接訪問した場合、例えば条件付きリダイレクトのような機構を用いるなどしてこれを実現する。
- https://www.w3.org/WAI/WCAG22/Techniques/server-side-script/SVR2 のような対応をする
- 非適合バージョンには適合バージョンに到達するためのメカニズムも提供 する適合ページからしか到達できない
- (筆者は理解しきれていない)
- たとえばプログレッシブエンハンスメントにおいて、ある適合ページに実装された機能が、あるブラウザにおいて利用できないときに非適合バージョンと見なされるが、この機能を排除するメカニズムを提供することで適合バージョンと見なせるということ、のようなケースを想定している?
- https://www.w3.org/WAI/WCAG22/Techniques/client-side-script/SCR38 を見て、そのように解釈できるのか...? と筆者は考えたのだった
- 非適合ページから適合バージョンにアクセシビリティ対応の手法で到達できる
(要件2) ページのすべてが適合していること
ページの一部が適合しているからといって、それをもって「適合している」とは言えない。
(要件3) プロセスにわたって適合していること
たとえばショッピングカートの購入フローのうち、一部が適合していても、それは「ショッピングカート」そのものが適合するとは言えない。
(要件4) アクセシビリティに対応した技術の利用
達成基準を満たすための技術は、アクセシビリティに対応した技術の利用方法のみが信頼される。
アクセシビリティに対応した技術とは、ユーザーエージェントが意味を解釈でき、支援技術に伝えることで実際に支援できるもの (ref)。
Techniques for WCAG 2.2 を確認しながら対応していくと、この要件を満たすことができるように見える。 How to Meet WCAG 2.2 で一覧できる達成基準で、対応したTechniquesを閲覧することもできる。 達成したい基準に対して、Techniques(技術)やFailures(反例)を見ることで対応していくことになりそう。
(要件5) アクセシビリティ対応していないコンテンツがアクセシビリティサポートを妨害しない
すべてのコンテンツがアクセシビリティに対応している形で表現されており、かつアクセシビリティに対応しないコンテンツが妨害しなければ、アクセシビリティに対応しないウェブ技術を利用できる。
たとえば、ウェブページにキーボードで操作できるグラフィックが含まれているとき、グラフィックの内容はスクリーンリーダーも解釈でき(=すべての情報がアクセシブルである)、かつキーボードによるフォーカス移動ができる(グラフィックにフォーカスがあたるとそれ以上フォーカス移動できなくなることがない)等の妨害がなければ、そのアクセシビリティに対応しないグラフィックを利用してもよい。